新緑のとても美しい季節、それを体中に感じる事の出来る大分県湯布院で初の個展の企画をした。
場所はgallery sow 。民家を改装した2つの部屋は1つは真っ白のペンキをきれいに塗り込んだ壁をもつ優しい空間、もう一つは床の間のある和室でありながら、どこかモダンで新しさのある空間で建物の周りには川や森や湿地があってどこも黄緑色に輝いている。今回、そんな中での個展の開催だった。
「林野宏美という人はいったいどんな人なのだろう。もっともっと作品を観たい。」
そんな思いで本人と会いTailartに掲載してもらったのが2006年の11月、燐とした印象は日常生活で着ている美しい和服でより強く伝わり、話すといきなりざっくばらんな雰囲気になるそのギャップには本当に驚かされた。
今回のテーマ「血と水」は両方とも人が生きる上で欠かす事の出来ないもの、エネルギーの源でもあるのだが、それと同時に血とは親から子、孫へと受け継がれていき、どんなにそれを否定しても自分の体から抜く事はできないものでもある。 林野自身のそんな「血」に対する強い憎悪、逃げられない苦しみ...それを自らの体を削り、写真作品として表現している。
今回の展示はその写真をインスタレーションとして、同じものを何枚も連続でみせたり、重ねたりする事でより深く脳に刻み込まれる、そんな展示であった。作品1つ1つは、まるで体の膿みの様なもの、誰にでもある家族や生、死に対する重く暗い水の底に沈んでしまう様な感覚にさえ陥るものであったが、それを体感した後の外の光りが酸欠ぎみになった自分に教えてくれる、緑の美しさ、空気のおいしさと生きるエネルギー。 「そうか湯布院に来ていたんだ。」
今回の展示を観て下さった皆さんはどう感じただろう。
あまりの重さに嫌気がさしただろうか。でも少なくとも林野宏美という人間の生きざまは1片なりとも感じて頂けたのではないだろうか。そして、次回また個展を開く時に「好きだと思えなかったのにどうしてもまた観たくなってしまった。」と思って頂けたら、そういう人が1人増えただけでも大成功に終ったと、とても嬉しく思う。
今回ご協力頂いたgallery sowの裏さん、ライブを個展会場でして下さった「南無」さん、onuki makotoさん、團塚豊さん、アーティストの森さん、コーダさん、その他アーティストや会場に来て下さった皆さん、本当に有難うございました。
2008年5月24日 原田 |